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【新連載】3回シリーズ(3)

第三回: 鬼あそび「あぶくたった」

京都教育大学附属幼稚園長 平井恭子

 1 月から始まったシリーズ「幼児の生活に息づくわらべうた」も、今回が最終回となりました。今回は、私自身も幼い頃に遊んだ「あぶくたった」の魅力についてとりあげてみたいと思います。

 11 月の終わり頃、3 歳児の保育室の前を通りかかると、何やら懐かしい歌が耳にとびこんできたので、思わず足をとめて中をのぞいてみました。すると、子どもたちが担任教師と輪になって「あぶくたったにえたった、にえたどうだかたべてみよ…」と唱えながら遊びが始まったところでした。輪の真ん中には、鬼役の4 〜5 人の子どもが副担
任を中心にぎゅっと小さく固まってしゃがんでいます。「むしゃむしゃむしゃ」になると、外側を歩いていた子どもたちが円の中央に寄ってきて鬼役の子どもたちの身体や頭を「むしゃむしゃむしゃ」と突っついて食べる真似をします。この動作が3歳児にはたまらなく楽しいのか、「むしゃむしゃ…」が通常より長引いてしまいますが、担任は焦ることなく、子どもたちの気のすむまで「むしゃむしゃ…」を楽しんでいました。

 そしていよいよ、「もうにえた」を合図に鬼役がままごとコーナーに移動し、保育者のリードで「鍵をしめて、ガチャガチャガチャ」「ご飯をたべて、むしゃむしゃむしゃ」「お風呂に入って、ゴシゴシゴシ」…「お布団入ってね〜ましょ」と、受け入れ準備が整いました。続いて「トントントン」「何の音?」「風のおと」「あ〜よかった」「トントントン」
「何の音?」「おなべの音」「あ〜よかった」…と繰り返すうち、待ちきれなくなった子どもたちから「何の音?」に続いて、「お化けの音」の声がとび出し、キャーっといって、追いかけっこが始まりました。

 この遊びは、鬼遊びが始まる「お化けの音」に至るまでに、非常に長い劇的なやりとりがあります。特に最後の「トントントン」「何の音?」の部分では、「お化け」以外にも「恐竜の音」「狼の音」など、子どもたちの中からいろいろな発言が飛び出しました。このように、心地よいリズムにのって仲間と息を合わせながら、動いたり、イメージを膨らませたり、ことばのやりとりを楽しんだりする面白さがこの遊びの中には凝縮されています。

 この日から2 週間後、「おもちつき」の日に、園庭に設置したかまどで餅米を蒸していると、3歳児のA子が寄ってきて「あぶくたった、にえたった〜」を口ずさみはじめ、瞬く間に周りの子どもたちの大合唱になりました。幼稚園で経験したわらべうたが、これからもずっと子どもたちの心や身体の中に息づいていってほしいと願います。