新連載

【新連載】2回シリーズ(2)

「環境として伝える事」

㈱コト葉LAB. 代表取締役 安中 圭三

 よく部屋の中は家庭の雰囲気で環境構成して…と言う話を聞きますよね。
 「家庭…」「家・庭」「家+庭」…
 そうなんです。家庭という字は「家」と「庭」という字で出来ています。
 であるならば、部屋の構成を考える時は「庭」についても一緒に考えながら、環境構成をしていって欲しいなと思っています。
 かつての日本では、障子を開け放すと外の空気が全面的に入ってきて、そこで風鈴が鳴ったり…。
その外側には中の様な外の場所である縁側があり、そこでは庭で収穫した柿や梅を干していたり。はたまた、そこで昼寝をしたり。…と言った様に、いたるところで内と外とが曖昧に繋がって暮らしが成り立っていましたよね。
 家の中と庭での活動が生活として、分け隔てる事なく考えられていたように思います。しかしながら、現代の多くの家では、すでに「庭」なんてない家がほとんどになってきています。悲しいかな、子どもの育ちに外が介在しない生活へとなりつつあるのです。
 園舎もまた、どこか室内で完結しているつくりになってきていると言うべきか、縁側の様な内と外とが曖昧な場所がなくなっている感じですよね。
(これは、実は建築面積の関係から縁側的な場所を大きくはつくりづらいという理由もあるのですが…)
 幼児期は心や身体を通じて身につけていく学びが多くを占めている事からも、外遊びは子どもの育ちにとても影響を及ぼす場所だと思っています。
 だからこそ室内からの眺め或いは気配として、自分とは別の誰か…特に異年齢の子が外で遊んでいる姿を日常的に見て取れるか否かが、育ちにはかなり重要な意味を持っていたりします。年少や年中の子が、年長を見ながら、どうやってやるんだろう?や、どうしたら出来るようになるんだろう?という事を彼らなりに部屋の中からも見て、聞いて、学んで、自分自身で出来る姿をイメージしているんですよね。又、外は自然現象などの偶然と多く出会う場所でもあり、環境での適応能力を育めたりもしますし…と、外(園庭)側から見ると、という話は尽きる事なく出てきてしまいそうです。
 何かを大きく変えていきましょう!ということではなくて全然良いと思います。花が咲く季節ではちょこっと一輪挿しに花を生けてみたり、雨の日は雨の音が聞こえるようにしたり、外で遊んでいる姿や声が見たり聞いたり出来る様に仕向けたり、内外に美味しそうな香りを嗅ぐわしてみたり、ちょっとした偶然に気づけたり…。
 大人も子どもも身近な風景の中で見て取れる何気ない景色の移り変わりを意識しながらの暮らし、そして庭での外の気配を感じ取れる事が、本来の家庭的なる暮らしの在り方なのではないかと思っています。
 家庭的である暮らしの中に、もう一度ちょこっとだけでも「庭」の事も仲間に入れて考えてくれるとありがたいなぁと、園庭をデザインしている人間からの戯言として、どこか気に留めておいていただけたら幸いです。