新連載

【新連載】3回シリーズ(2)

信頼をなくす「あとで型」

佛教大学 髙橋 司

 日本の幼稚園教育の父と言われる倉橋惣三は、「飛びついてきた子ども」というテーマで、次のような文を表しています。
 〝子どもが飛びついてきた。あっという間にもう何処かへ駆けていってしまった。果たしてあの飛びついてきた瞬間の心をその時ぴったりと受けとめてやったであろうか。”

 そんなことを考えてみたいと思います。
 保育者の中には、「あとで型」はおられないでしょうね。
 「先生、あのね。」
とそれだけ言っただけでこの「あとで型」の保育者は、「あとで、あとで、ちょっと待ってね。」と後回しにしてしまう保育者のことです。

 特に目の前の行事に追われたり、日々の生活の中で忙しい時に、「あとで型」が出てくるのです。

 もちろん、猫の手も借りたい、両手が塞がっている時にはなかなか対応できないのでしょうが、そんな時には、 「そう、ちょっと待ってね。このご用が済めばゆっくり聞いてあげるから。」とまずは納得させて欲しいのです。

 それを、「あとで」で終わってしまい、その「あとで」は、用事が終わっても果たされないことはよくあることです。
 こんなことが何回も重なってしまいますと、やがて、報告をしたり、話しかけたりする意欲がなくなってきます。
 忙しいけど、その時は手を休めて、 「ちょっとだけでもいいから、話してちょうだい。」と顔を覗き込んでください。
 子どもが一生懸命に話したいと思っている時、いっこうに取り上げない姿勢は、子どもから信頼を受けることはありません。
 仕事の手を休めて、子どもの方を向いて視線を合わせて聞いてみましょう。
 その時の嬉しそうな顔には、自分の話を聞いてくれるという喜びが湧いてくるのです。
 話の合間には相槌を打ち、うなづいたりして、「よかったね。この続きは用事が済んだらまたしてね。」と期待を持たせての「あとで」を願います。
 大きくなった時、大人と楽しく自由に対話ができた子どもは幸せでしょうし、もっと大切なことは、思春期の難しい時期もこうした対話ができていると、きっと乗り越えられるはずです。
 そこには大人に対する信頼感があるからです。
 それがないと、
(ぼく、一生懸命見つけてきたのに、、、)
(先生に知らせて褒めてもらおうと思ったのに、、、)
(今度からもう言ってあげないから、、、)
(どうせ先生に言っても聞いてもらえないし、、、)
といった心がきっと残るでしょう。
 子どもの発言に耳を傾けてください。目を見て親身になって聞いてあげると、いつもお話をしたい心が湧いてくるのです。