新連載

【新連載】2回シリーズ(1)

地域母子保健事業に関わって

京都橘大学 非常勤講師 齋藤洋子(保健師)

 市町村は、母子保健法で1 歳6か月児健診と3 歳児健診の実施を義務付けられ、その他は努力義務となっていますが、全国的に乳児期前期(3 ~ 4 か月児)健診、乳児期後期(8 ~ 10 か月児)健診を実施しています。
健診だけでなく、妊娠・出産・育児に関わり家庭訪問や相談、教室など様々な母子保健事業を実施しています。

 長年母子保健事業に関わり、就学前の子どもの育ちに関わりを持つ事の重要性を痛感していました。縁あって幼稚園教諭・保育士養成の非常勤講師をさせてもらいました。

 幼児教育課程の学生に最初に言うことは、「子どもは、大人とは違い未熟です。発育・発達途上人です。それと、
世の中には先生と呼ばれる職業はたくさんあります。小・中・高・大学と学校にあがっていきますが、保育所・幼稚園が土台ですから一番大事な仕事をする先生です」と強調します。大学で、将来幼児教育の仕事をして欲しいと思う男子学生がいましたが、彼は結婚する相手が安定した収入が得られない人だからと、企業への就職を希望しました。もっと日本の幼児教育に関わる職員の処遇改善が必要だと痛感しています。

 さて、保健所や保健センターで乳幼児健診を受けた保護者の方からどのような感想を聞いておられるでしょうか。

 健診の場面だけの子どもを見てなにがわかるのですか?細かいところを指摘して異常だと言わないでほしい。うちの子障害児だというのですか。いやな事を言われるから健診を受けたくない。など等聞いたものです。もちろんその反対の内容の方が多いのですが…

 健診で何をされるか親も子も緊張しています。3 歳児では発達のスクリーニングの項目を練習してくるケースもありますが、長年同じ年齢の子どもを健診の場で観ていると、毎日みている保護者には気付けないことも気づくことができます。だから、乳幼児健診は大事だし、スクリーニングで気づく問題点はそれなりに課題だと言えると思っています。

 乳児期の問題は、身体的な事が多いので保護者の方も健診で見つけてもらって安心されます。保護者は健やかに育っていることを確認するために健診を受診します。幼児期の健診は、それぞれの個性が表面に出てきますので、発達上の課題が見えてきます。対人関係の課題など、これからの学校生活や社会へでてからの困りごとがなるべく少なくなるように早期対応を就学までに取り組むことを目的にしています。

 実は乳幼児健診で問題点を指摘されても、じゃあどうしたらいいのというのが呈示してもらえないとしたら健診を受ける意味がありません。だから受け皿をしっかり作ることも大事です。母子保健事業を取り組むにはその地域で何が問題でその課題を解決するにはどのようなシステムや事業があればよいかを考えてきました。特に発達支援法が国会で採択された期を逃さず、長年必要と考えていた「( 仮称) 就学前のことばの教室」を事業化しました。就学までの早期アプローチが望まれたからです。(実現までに時間はかかりました)地域の母子保健システムを作っていくのはとてもやりがいのあることでした。