新連載

【新連載】2回シリーズ(2)

地域母子保健事業に関わって

京都橘大学 非常勤講師 齋藤洋子(保健師)

 乳幼児健診が真に子どものために有意義なものになるように私達は何をするべきか。
 健診の実施者は、保護者に必要な事を伝えなければいけません。責任として問題を見逃してはいけないのです。
 保護者は健康に育っていることを確認するために健診を受けます。両者とも「子どもの健やかな成長・発育のために」を願っています。
 健診を受診する時、その健診に良いイメージを持っておられるか、マイナスイメージで捉えておられるかで結果の受け止めは変ります。健診に対して信頼感を持っておられたら、結果を正しく受け止め、必要な事
がスムーズに繋がります。

 では、マイナスイメージは、どのようにつくられるのか。健診を受けた保護者がその時の印象を他の保護者に伝える、その中身が地域に拡散するわけです。母子保健の担当スタッフの力量が問われるわけです。
 しかし、保育所や幼稚園の先生が健診の意義を保護者に伝えていただくと、保護者同士で話があっても、その話題が暴走することは防げると思います。

 乳児期は心臓や股関節の異常等の早期発見の役割がありますが、それらより最近は子育て支援に重きが置かれます。妊婦のとき、新生児訪問のときなどに訴えがあったり気になる様子があったケースに、地区担当の保健師が保護者に寄り添って相談に乗ります。(地区担当制の保健師活動を行っていました)

 近年は虐待が社会問題化し、乳幼児健診や予防接種の場は虐待の発見、予防、抑止効果の場としての役割を期待されています。健診未受診児は必ず把握するために家庭訪問が必要になります。健診に行かないと虐待を疑われるとの保護者の意識から、健診の受診率はアップしています。

 乳幼児健診では、身体の発育だけでなく精神・言語・対人関係の発達についてもスクリーニングを重視し、特に3歳児健診は歯科・視力・聴力・尿検査など盛りだくさんの項目を取り組みますが、知的発達に問題がない児は1 対1 の面接では気づきにくいし、保護者も問題意識を持っていません。おのずと集団生活に入ってから一斉指示が聞けない等で気づくことになるのです。3歳児健診は市町村最後の健診ですがその後も相談に応じます。そのことを健診では必要と思われる保護者に伝えています。特に幼児期の発達に関わる専門職として臨床心理士や臨床発達心理士が活躍してくれます。

 就学してからの療育は就学前に取り組むより約3 倍の時間がかかると言われます。発達障害があっても児と保護者が前向きに生活できるように幼児期に土台をしっかりつくってあげられたらと思います。知的には問題の無い発達障害児は、周りの取り組み次第で、本人の才能を伸ばすことにも二次障害をつくることにも成ってしまいます。

 今後とも母子保健を実施する市町村の担当と幼児教育を担う保育所・幼稚園のスタッフが、連携しお互いに協力して子どもの成長発達を見守っていきたいと思います。