新連載

【新連載】3回シリーズ(2)

子育ては「うまくはがれるように離す事」(2)

Joyit 代表 臨床心理士 井上知子

 子育ての目標は何でしょう?と保護者に問うと返ってくる答え。元気で優しい子に。健康で人の事も考えられる子に。大人になった時、自分で考えて行動できる人に。毎日が楽しめる子に、等々。それぞれナルホドと思います。気は優しくて力持ちの桃太郎さん。望ましいですね~。かっての私もそう思い、先ほど書いた保護者と同じく、日々奮闘し子どもにきちんと話してこの世のルールを教えこまなければならない、と思っていました。

 さて、ここにリンゴの木があります。実よ、早く大きくな~れ!立派な実にな~れ!そして実を大きくすることに親は一生懸命。子育てとは立派な実にする事、と考えている人が多いかもしれません。有名大学に是非入れるためには、塾はどこ、と目の色を変える、など。
しかし、リンゴの実は親の木からうまく離れて行ってくれないと木の上で腐ってしまうのです。だから子育ての目標とは、子どもが親の木からはがれるように自然に離れて行って一人でやっていく力がつくようにする事、となるでしょう。親からすれば「力を付けつつはがれるようにうまく離す事」となるでしょうか。親は、早く大きく立派な実にな~れ、と思っているかもしれません。しかし、本当は急いではいけないのです。人が育つのには時間がかかるのです。しかも基礎がしっかりしていないと、心の健康な子に育つのが難しいのです。基礎とは何でしょう? この世は人と共同していく所、自分の事は基本的には自分でする所、自分の出来ないことは人に頼める所、そして楽しめる所、居心地のいい所、成長するのが面白い所。でもルールのある所、ルールを守れば安全な所。そういう事をしっかり伝えていきたいものです。私はそれを教え込むのでなく、子どもの主体を起こしながら、経験を通して学んでもらい、人としての芯を育ててもらう方が安全だと思うようになりました。教え込めば、表面上わかったように見えますが、なかなか芯に届いていない現象を目にするからです。 

 自己肯定感とは、定義がとても難しいですね。できる事も出来ないこともあるけれども、失敗もするけれども、自分は自分であって大丈夫、工夫しながら前に行ける、等身大の自分を認められる、受け入れられる事が必要かと思います。自己肯定感の育っている人は平和であり、落ち着いており、自己主張もしますが人との協力もできるので人との関係もたいていは良好、自立してもいるからです。主体の起きている子への関わりは建設的で楽しく、大人は、面白いと感じることが多いでしょう。教え込みや上からするしつけが多すぎて、その割には責任をとってもらわないとか、かゆいところに届くケアの育児は相手を受け身にさせ、主体が起きにくくなります。「自分のために人は何をして
くれるのか」ということを学び、待っているためです。また、周りのケアが強いと、自分で自分の人生を動かせていないので、納得度が低く、劣等感も起きやすく、自己肯定感も低くなります。子育てはうまくはがれるように離すことがコツ。さてその離し方は、どうすればいいのでしょう?私たち大人の知恵が総動員されなければならないと感じます。