新連載

【新連載】2回シリーズ(2)

保育者の働き方改革の実際

佛教大学教育学部教育学科 教授 佛教大学附属幼稚園 園長   佐藤 和順  

 保育者の働き方をより良いものにしていくためにはどのようなことが必要となるのでしょうか。 第一に,保育者が安心して働ける職場環境を作ることが前提となります。具体的には,保育者の休憩時間の確保を含む勤務時間の改善や有給休暇の取得促進などを進める。また,育児・介護休業法に基づく育児・介護休業制度や短時間勤務制度,子の看護休暇・介護休暇制度などについて就業規則などに整備することです。また,勤務時間・雇用形態にかかわらず,保育者の技能,経験,役割に応じた処遇に努めなければなりません。

 第二に,保育や行事の見直しです。行事の負担感が大きいという意見は,保育者からよく聞かれます。その行事が何を目的としていて,子どもの育ちにどのような影響を有しているのかを再度考える必要があるでしょう。例年通りではなく,その行事の持つ意義を検討しなくてはいけません。このことはコロナ禍により多くの園でも実践されてきたことではないかと思います。また,行事加えて,日々の保育の方法についても,検討をしている段階かと思います。

 第三に,書類削減,ICT 化などの活用による業務改善です。例えば「クラス記録(保育日誌など)」「長期的な計画」「短期的な計画」については最低限必要な項目を定め,簡素化するなど標準化することで保育者の負担軽減につながるのではないかと考えられます。行政との連携も必要となるでしょう。それをICT 化すれば負担は一層軽減されるでしょう。園ごとに検討することも必要ですが,国や自治体などが中心となりこのようなひな形を示すことが早急に求められます。

 第四に,多様な人材活用による業務改善です。例えば,行事に必要な装飾の企画やデザインはクラス担任が,そのデザインを基に製作する作業を保育補助者が担当するように役割分担を行うことなどが考えられます。
担当をすみ分けることによりクラス担任の行事準備にかかる負荷が減るという仕組みです。実現のためには,両者間でしっかりと意思の疎通が必要となるでしょうし,いかに雇用するのかということも課題となります。

 以上のような保育者の働き方改革が目指すものは,まずはノンコンタクトタイムの確保です。保育者の子どもの育ちに常にかかわりたいという気持ちは十分にわかりますが,時間は有限ですし,一人当たりがこなすことが出来る業務には限りがあります。時間を効率的に利用する高い時間意識を保育者間に定着させることが必要です。

 これまで述べてきたように保育者の働き方改革は,保育者,園だけではなく,運営事業者そして国や自治体すべてが連携をして進めていかなければならないものです。そして,すべては保育の質の向上,子どもの育ちを確かなものにするために行われるという意識が必要です。保育者にとって魅力的な園は,きっと子どもにとっても魅力的な園に違いないと思います。魅力的な園で,しっかりと子どもの育ちを支える,保育者が自己実現できることを目指して日々保育に勤しみたいものです。