新連載

【新連載】3 回シリーズ(3)

「子どもと森を歩く」

京都森林インストラクター会 会員 松井 千代栄

 昨年の夏、近くの森を散歩していたときに急に来たのです。「ん?これ、カブトムシのにおいやん!」そして思い出しました。小さい頃、近所のおじさんがカブトムシ捕りに連れて行ってくれたこと・・・。今、森歩きを楽しんでいるのは、あのおじさんのおかげかもしれません。

 さて、子どもたちといっしょに森を歩いていると、「こんな石みつけた♡」とうれしそうに手のひらにのせて見せてくれることが何度かありました。これは、私の中ではちょっとした謎だったのです。だんご虫が好きなのはわかりやすいけど、石ころかぁ・・・みたいな感じです。そんな中、昨年の10 月に川原できれいな石を探すイベントがあり、思いきって一人で参加しました。集合場所にはリュックを背負った大人たちや家族連れなど20 数名が集まっていました。川原まで約15 分歩き、現地で簡単な説明を聞いたあと、みんな散らばって石を探し始めました。もちろん黙々と。

これはかなり面白い光景ではないかと、顔を上げて周りを見渡したとき、「あっ、そうか!」と思いました。私を含め、大人たちはみんな腰をかがめて探していたのですが、小さな子どもたちは普段歩いている姿のまま、顔だけ下向きで探していました。しかも、きれいなガーネットや紅柱石を上手に見つけているのです。

 今考えれば当たり前のことですが、子どもたちは大人たちよりずっと近くで石を見ることができるのでした。子どもは背が低い―つまり地面に近いのです。いっしょに森を歩いていても、身長160cm の私が見ている森と、身長100cm の子どもが見ている森は違うかもしれません。地面に近いということは、土のにおいを強烈に感じたり、茂みの中のカサカサした音も敏感に聞き取れたりするのではないかな・・・と楽しい想像がふくらみます。きっと、子どもたちは見ている、聞いている、感じているけれど、大人にはわからないことがもっといっぱいあるんだろうなと思いました。

 そういう視点でこれまでいっしょに森を歩いた時の子どもたちの様子をふり返ってみると、みんな小さなからだ全体で森と関わっていたのだなぁと改めて感じます。岩の間からちょろちょろ流れる水にそっと指を近づけてみる、ふかふかのコケをごそっとひっくり返してみる、倒れた木に生えたきのこをつついてみる、落ち葉のじゅうたんを蹴飛ばしてみる等々、子どもたちは子どもたちのやり方で森を楽しんでいたのでした。

 「森は楽しいよ!」といっても、子どもは一人では森へ行けませんし、行ってはいけません。いっしょに出かけてくれる大人が必要です。家族、幼稚園の先生など身近な大人といっしょに出かけるのが最高です。そして、近くに住んでる森好きのおじさんやおばさんもいます。今年も歩きますよ、子どもたちといっしょに。