新連載

【新連載】3 回シリーズ(2)

「ポジティブに」

京都光華女子大学 こども教育学部こども教育学科  永本 多紀子 

 絵の苦手な私でしたが,クラスの子どもたちは絵が大好きで,展覧会に応募して賞をいただいたこともありました。自分の得手不得手で子どもたちの遊びや経験を考えるのではなく,子どもたちが好きなことやいろいろな経験がたくさんできる保育をすることの大事さも味わいました。

 しかしながらポジティブ思考で行こうと思う反面,私はやはり自分に自信がなく,いつもどちらかというと穴があったら入りたい。逃げ出したい。目立ちたくない・・・と常に思っていることの方が多かったと思います。それでもいろいろな時に声をかけていただきました。保育を公開したり,研究発表を行ったり自分の思いとは逆の方に進んでいくように思いました。自分の実力以上のことを引き受けて,自分で自分を苦しめるようなことが多々ありました。
十分,期待に応えることができなかったこともあったのではないかと思います。それでも自分なりに一生懸命取り組みました。もしお声掛けいただいた時に,悩んで引き受けていなかったら,きっと「やっぱりあの時頑張っておけばよかったかもしれないな・・・」と後悔していたのではないかと思います。

 声をかけてくださるということは,やはり「この人なら何とかしてもらえるだろう」と期待をしてくださっているからだと思うのです。ネガティブ思考のままで何も引き受けなかったなら,楽に過ごせたかもしれません。でも,きっと今の自分は存在しなかったでしょう。自信過剰はよくないと思いますが,自信不足でも子どもたちの保育に良い影響はないでしょう。これまでたくさんの子どもたちと出会いました。同じ園に長年勤めさせていただいていたお陰で,幼稚園卒園後も高校生や大学生になった子どもたちと出会うこともよくありました。この子どもたちと過ごした幼稚園時代は私の本当に良い思い出で,いつまでも大事にしたいと思っています。

 幼稚園を定年退職して,大学にお世話になることになりました。「私に出来るのだろうか」「やっぱり無理じゃないかな」「え~どうしよう・・・」覚悟を決めたものの,また一気にネガティブ思考に陥り,ずっと悩んでいました。

 そして私ができることは何かを考え直した時に,『保育者を目指す学生さんたちに,この幼児と関わる仕事の素晴らしさや楽しさ,大切さを伝えることが使命だ』という気持ちで頑張っていこうと思いました。

 でもなかなか難しいことでした。私の出来ることを精一杯やろうと思いながらも,どんな風になるのだろうと先の予測が全くつかずにいました。それでも待ったなしで授業が始まります。助けになるのは,やっぱり子どものたちとの日々でした。撮りためた写真やエピソードがとても役に立ちました。「これで頑張ってみよう」とちょっと前向きになれたのです。