新連載

【新連載】3 回シリーズ(3)

「ポジティブに」

京都光華女子大学 こども教育学部こども教育学科  永本 多紀子 

 「この科目では,このことを伝えたい」と授業資料をつくって授業に臨んだのですが,私は,自分が経験してきたことを伝えたい!という思いが強すぎたようです。どの授業も90 分ほぼしゃべり続けました。授業評価で,「先生がどれだけ幼稚園が好きかわかった」「先生の熱い思いが伝わった」というプラスの評価と共に,「一方的である」「大事なことは何かがわかりにくい」という意見もあり,「これではいけない。修正しなくては」という気持ちはありながらもなかなか修正できずにいました。自分は分かっているつもりで話していて,それでは相手に伝わらないのだということも改めて学びました。保育においてもちょっとした「間」があくと,どうしたらいいかなと思うことがあります。大学の授業においても,自分がしゃべり続けないと自分自身が不安であるという
ことも大きかったと思います。

 「あ~困った。やっぱり無理かな」と弱気になる気持ちをぐっと抑えて,どんな風にして修正をしたらいいのかを考えました。幼稚園の保育においても「主体的,対話的,深い学び」ということを考えていましたので,この視点から授業を考えてみました。『保育者がすべてお膳立てをしない』『保育者が見通しをもって計画をするが,保育者の計画通りに子どもを誘導しすぎない』『子どもたちに考えることのできる時間を保障する』など大事なポイントは,授業でも同じではないかと思いました。

 私が一方的にしゃべる授業でなく,『学生が自分たちで考えたり,相談したりする時間を保障する』ということを心がけて,授業を組み立て直してみました。グループでの話し合いや発表がうまくいくと「やった」と秘かに喜んでいました。若い学生さんと時間を共有したからこそ感じられた新しい発想は,新鮮でした。この時を共有できるのは,「声をかけてもらった時はチャンスと考える」「自分にできることを精一杯やろう」「やらない後悔より,やって後悔の方がいい」というポジティブ思考のお陰だと思っています。

 でもいろいろなことに自分から積極的に取組んでいるという訳ではありません。まだまだ本当のポジティブ思考というのではないと思っています。振り返ってみると,ずっとこれまで仕事中心の生活でした。仕事・子育て・家事の3 つをするだけで精一杯で,しかも仕事の締める割合が高く…。それは責任ある仕事に就いているのですから当たり前のことだと思っています。そのことに対して後悔がないかと言えば,やっぱりちょっと心残りはあります。私自身器用な人ではないので,あれもこれもすることはできないので仕方ありません。でもこれからは,ちょっと視野を広げて,自分に出来ることを見つけて楽しんでいければいいなと思っています。「○○が得意です」「○○が好きです」とまで言えないかもしれないですが,これからもポジティブ思考を大切にしていきたいと思っています。