新連載

【新連載】4 回シリーズ(1)

「子どもの育ちに大切なこと」

レジリエント・シティー京都市統括監 元京都市副市長  藤田 裕之 

  皆さんは、ご自分の子どもたちにどのように育ってほしいと願っていますか?

 たくましく健康で、思いやりのある、また賢く、自立した子ども。様々な困難に直面しても、勇気を持って立ち向かい、ポキッっと折れそうなことがあってもしなやかに耐え、万が一、折れてしまうことがあっても、また立ち直ることができる人間。親なら、誰でも子どもたちに、そんな風に育ってほしいと感じるでしょう。

 そのために、必要な環境はどのようなものでしょうか?物質的に豊かで便利な社会は、子どもたちの育ちにとって、好ましい環境だと言えるのでしょうか?

 加えて、インターネットやスマ―ト・フォンの普及で、何でも簡単に手に入り、相手を傷つけても何も感じない「仮想現実」が、子どもたちに無限の可能性を提供
してくれるような錯覚を与えていますが、子どもたちにもっと必要なものがないでしょうか?

 私の好きな言葉に
  「乳児はしっかり肌を離すな!
  幼児は肌を離せ、手を離すな!
  少年は手を離せ、目を離すな!
  青年は目を離せ、心を離すな!」
 という子育て四訓があります。

 青年に成長した時に、「心」が離れないために、乳幼児期にはしっかり子どもの目を見ながら関わりたいものです。

 その意味で、近年、私がとても気になっているのが、「ながらスマホ」です。こう申し上げると皆さんは、歩きスマホや自転車スマホを思い浮かべるかも知れませ
ん。もちろん、それらが、自分にとっても周囲の人にとっても危ない行為であることは言うまでもありません。しかし、私が敢えて申し上げたいのは、「子どもと
関わりながらスマホ」です。子どもがぐっすり眠っている時ならいざ知らず、家で子どもと一緒に過ごしている時間に、あるいは、電車やバスに乗って、子どもが一生懸命、話しかけたり外の景色に目を輝かせたりしているのに、親はスマホの画面を見ている光景を見ると、とても悲しくなります。おそらく、親御さんにも事情があってスマホを見ている場合もあるでしょうが、それなら、子どもに、「今、あなたの相手をしているより大切な情報が、このスマホの画面に出ているので、しばらく我慢していてね!」とちゃんと説明できるかどうか、考えてみてください。

 ある調査では、乳児は、親が一生懸命見つめるものを、自分も大切だと感じるようになる傾向があるそうです。幼少期の子どもにすれば、親が後生大事にいつも見ているスマホは、きっと「世界で一番大切なものなのだ!」と信じても、決して不思議ではありません。

 大変なことも多いけど、今しかできない子育てです。子どものお手本となるべき大人が、スマホやゲームにばかり、肝心な時間を奪われてしまうことは避けたいものです。