新連載

【新連載】4 回シリーズ(3)

 

「少子化克服への視点」

レジリエント・シティー京都市統括監 元京都市副市長  藤田 裕之 

 今や子ども向け番組やワイドショーでも頻繁に取り上げられている「SDGs」。既にご存知の方も多いと思いますが、2015 年の国連サミットで「持続可能な開発目標」として採択された、2030 年までの国際目標です。17 の柱からなっており、その一つ一つは至極当然の課題ばかりです。

 しかし、持続可能な、つまりSustainable という言葉は、地球が生物の生命を宿す惑星として持続可能であることを目指しており、現状では、地球の持続可能性を脅かしている張本人は人類に他ならないかも知れません。

 開発、つまりDevelopment という言葉も、一見、山を切り拓き、海を埋め立てる市街地開発のようなイメージを持ってしまいますが、決してそうではありません。ここで言っているDevelopment は、社会の発展や経済成長を意味しており、私なりに意訳すれば、「持続可能なシステムの開発」と考えるのが妥当ではないでしょうか。

 また目標、つまりGoal も、テープを切って終わりという運動会の徒競走のような目標ではなく、あくまで通過点であると言えます。

 さて17 の目標には、①貧困、②飢餓、③福祉、④教育、⑤ジェンダー、⑥水とトイレといった人間の日頃の生活に密接に関わる課題から、⑦エネルギー、⑧経済成長、⑨技術革新、⑩不平等の是正、⑪まちづくりといった豊かさの質を問う課題、そして⑫消費と生産のバランス、⑬気候変動、⑭海の豊かさ、⑮陸の豊かさといった地球環境に関わる問題、そして⑯平和、さらには⑰パートナーシップといった項目が列挙されていますが、重要な点は、各項目は決してバラバラではなく、密接に関係し合っているということです。別の表現をすれば、SDGs の最大の課題は17 の項目で新たな縦割りを作ってしまわないということでもあります。

 例えてみるなら、17 本の柱で桶を作る作業に似ているかも知れません。それぞれの柱に隙間があったり、長さが違ったりしては、桶には水が溜まりません。隙間なく、長さも揃った桶を作ることが大切なのです。

 その意味でも、SDGs において大切なポイントは、一つ一つの事象や出来事が、どのように繋がり合っているか理解し、様々なハードルや困難に対しても、継続的に我慢強く取り組むことだと言えるでしょう。

 さらにその根底には、地球環境を決して無限のものと考えてしまわず、私たちが地球のお陰で生かされていることを感謝する必要がありそうです。近年、「プラネタリー・ヘルス」という言葉が注目されるようになってきました。 
 
 プラネタリー・ヘルス、つまり惑星としての地球全体の健全な姿ということになるでしょうか。そこでは、人類だけが生き延びるという発想は存在しません。人類も他の動植物と同じように、この惑星に生命をいただいた存在であり、相互に関係し合いながら、存在しているのです。