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【新連載】(番外編)「働き方改革」に思う

「働き方改革」に思う

(公社)京都市私立幼稚園協会特別支援教育研究会 顧問/ 元立命館大学教授 朝野 浩

 (公社)京都市私立幼稚園協会特別支援教育研究会を担当するようになって10 年を超えました。当初は、障害についての先生方の理解がまだまだ十分ではなく「保育上の困りの原因が、障害のある子どもたち自身によるものだ」との考えがありました。先生方の指導上の「困り」の原因が、子どもの行動上の偏りが障害そのものからくるとの考えです。ですから、「教室から飛び出すのを止めるにはどうしたらいいのでしょうか」「みなと同じ行動がとれないので、どうしたら参加できるでしょうか」「保育の途中に突然に保育者に話しかけてきて中断させてしまいます。どうしたら制止できますか」などコミュニケーションのとれな
さや集団行動に参加できない状態や日常身辺生活に関する行動の偏りに「どうしたらいい」と保育者だけでなく保護者なども含めて振り回されている感がありました。

 人の行動には必ず原因があり、環境や周りの状況に左右され、障害の特性がより困難さを増幅させてしまうことを、研修や個別相談の巡回指導の場で、対処療法的な方法ではなく、課題のある子どもだけではなく、全ての子どもにも当てはまる、日ごろの保育の上での大切な子どもの行動の見方、捉え方を説いていました。

 その解決には、先ず「ASDはこんな障害特性があります」「ADHAはこれこれの行動を示します」などという予防的・対策的指導法の考えから解き放たれ、子ども自身の行動をじっくりと観察することから始めます。保育者の「困り」の原因であるできていないことでなく、失敗しても頑張ってやろうとしていることやできようとしていること、これを私は「芽生え現象」呼びますが、これを見つけて、「いつ・どんな状況で・誰と一緒か」などを記録することから始めなさいと研修会で説き続けて10 年が経ちました。

 先生方の保育上のご苦労をもう少し全体に伝わるような方法がないものかと考え、特別支援教育研修会の事業の一環として、有志の先生方と共同で『保育支援計画』の作成もしました。なかなか活用していただいている現状ではありませんが、子ども自身の「困り」や成長を捉えることができ、
保育者同志や保護者と情報共有する材料となるものと考えます。

 標題の「働き方改革」は、一般的には労働者の働く環境や条件の改革を意味するものですが、究極は「はたらき甲斐」をどのようにしていくことだと思います。私たち幼児教育に携わる者は、子どもたちが楽しく、元気に、安全・安心して健康的に過ごせる環境を提供することに努めることと思います。そのためには、こども理解のための働き方(保育)を「生き甲斐」をもって挑戦することだと思います。課題や障害のある子どもの姿も多様性が日々増している中で、園内で保育者同志が協力して問題解決や障害や課題性ついて情報共有のあり方に挑戦する時代が来ていると思います。研修会のあり方も、よりニーズに応じた内容に改革していくことが大切になります。教育者の私たちの「働き方改革」はこの視点を除いては「やり甲斐」「働き甲斐」はないと思いました。