【新連載】子どもたちのこれからのために幼稚園で育てたい3つの力
京都ノートルダム女子大学 現代人間学部こども教育学科教授 神月紀輔
1 進むICT の利活用
先生方は実感をされていると思いますが、幼稚園での生活は3年間で長いようで短いです。もう少し言葉を代えればあっという間に小学生になるということです。
新聞ニュース等でご存じのこととは思いますが、小中高等学校では「GIGA スクール」構想により1人1台のパソコン(またはタブレット)が配布されます。
家にも持って帰ってきますので、家でネットが使える環境が必要になります。
好む好まないにかかわらず、小学校1年生からは、何らかの形でネットと付き合うことになってきます。今後の学習や先のことにはなりますが就労のことなどを考えますと、このことはいいことであるとは思います。しかし、急に来ることを考えると、幼稚園生活でもその準備がある程度必要になるということになります。
2 幼稚園で何をすればいいのか
私の私見も混じりますが、幼稚園児の発達段階では、急いでPC やネットに触れる必要はないと思っています。むしろ、デジタル機器の画面は、認知や視力などに関してあまり好ましいとは思いません。
では、何を準備すればいいのでしょうか。
実は、これまでの教育を大きく変える必要はありません。むしろ推進すべきです。幼稚園の時期こそ、人と人の触れ合いや、人を思う心を育ててほしいと思っています。
3 今育てたい3つの力
PC やインターネットは人と人の連絡の手段です。前回のこの欄でも書きましたが、インターネットをしっかり扱うためには、人として人を思う気持ちが育っていることがまず前提で、拙速に機器を扱っても、人を思う気持ちがなければ、その情報は宙に浮いた情報になってしまいます。
では特に必要な力は何でしょうか。私は、それは判断力・自制力・責任力の3つであると考えています。
まず、判断する力は、経験が特に必要です。もっといえば失敗であったり、うまくいかないことから自分の力で解決していくことの経験が必要であると思います。例えば、お友達と意見が合わず衝突したり、思い通りにいかなかったり、それをどう解決していくか、まさにそんな経験を幼稚園では園児は毎日しているのではないでしょうか。そのことは、自信を待った判断や、正しい判断に結びついていきます。いろんな場面で人と一緒に活動することこそ判断力を育てると思い
ます。
次に自制する力。やりたいなと思うことがあっても、人に迷惑がかかりそうだとか、別にやるべきことがあるとか、これもいろんな人との活動の中で経験し育てられていきます。家族の中だけでは、この力はなかなか育てることは難しいと思います。また、楽をしようとしたしり、簡単に物事を済まそうとばかりしているとこの力は育たないと思います。
そして責任を持つ力。自分のやったことに責任を持ちたいです。掃除がうまくできる。自分で散らかしたら片付けをちゃんとする。一つ一つに自分でやったことは自分で責任を持つ。責任が持てそうにないことであれば人に相談したり、自制を働かせたりすることができてほしいと思います。
4 重要な幼児教育での人とのかかわり
前回にも書きましたが、無責任な書き込みや、少し考えたらやめておけばいいようなことに手を出すなど、ネットの世界ではいろいろなトラブルが起きていますが、人として成熟していないことがまずは原因と思われます。
いま、これからの世界を発展させるために、実は幼児教育や小学校の低学年での人とのかかわりをしっかりもつことが本当に重要になっています。