【新連載】天上天下唯我独尊 4 回シリーズ(1)
真宗佛光寺派 大行寺住職 英月
はじめまして! 四条烏丸近くにある小さな寺の住職を務めております、英月と申します。この度は会報誌にご縁をいただき、ありがとうございます。
さて、4 月8 日は、お釈迦さまのお誕生日です。約2500 年前のインドで釈迦族の王子、ゴータマ・シッダールタとして生を受けたお釈迦さま。驚くことに、生まれてすぐに歩くこと7 歩、右手で天を、左手で地を指して「天上天下唯我独尊」と言ったとか。新生児がそんなコトを出来るハズがない! と思いますよね。確かにそうです。けれどもこれは、お釋迦さまが明らかにしてくださったことを、象徴的に表しているエピソードなんです。
とはいっても、「天上天下唯我独尊」って、なんだかお山の大将っぽくも聞こえます。この世で俺サマが一番エライんだー! ってね。けれども早まるな、です。そういう意味じゃないんです。これは、「天上天下にただ一人の、誰とも代わることのできない人として、このいのちのままで尊い」ということなんです。他の誰かと比べて、私のいのちの方が尊いと言っているのではなく、いのちの事実を明らかにした言葉なんです。
いのちの事実とは、健康か病気か、お金があるかないか、いい学校を出たか出ていないか、社会的地位があるかないか、結婚しているかしていないか、子どもがいるかいないか、持家か賃貸か…等々の世間の価値観に関わらず、私たちのいのちは、そのままで尊いということです。そして、当然のことながら、今、これを読んでくださっているあなたも、そして私も、その尊いいのちをいただいているのです。
数年前に、こんなことがありました。講演会が終わって控室に戻ると、イベントスタッフの方がお茶を淹れながら私に向かって「話しが素晴らしくても、独身で、子どもを産んでいないのはダメね」と仰ったのです。その言葉が持つ、他者を傷付ける暴力性に言葉を
失いました。と同時に、私の母親世代のその女性にとって、女性の価値はそこなのかと悲しくなりました。
ご一緒したのはわずかな時間でしたが、テキパキとイベントを仕切り、お仕事のできる方でした。結婚して子どもがいること以外にも、ご自身には価値があることに気づいて!と、思ったことを覚えています。しかし今、改めて思い返してみると、評価された私もま
た、他者を評価していたのです。何様のつもり? です。
世間や自分の価値観で、他人や自分のいのちを評価するだけでなく、評価をしていることにも気づいていないなんて、オメデタイ。否、恐ろしい。そんな私たちに、お釋迦さまが明らかにしてくださったことは、「あなたは、誰とも比べることも、代わることもできない尊い存在」だという、いのちの事実です。そう、「天上天下唯我独尊」です。
今回から4 回のご縁は、このような仏教の気づきを、皆さまと共有できればと思っております。紙面を通してですが、“共に” ご一緒できますこと、楽しみにしています。