新連載

【新連載】子ども自身が考えを生かし合う生活を創る   3 回シリーズ(1)

元立命館大学 教授 幼稚園協会特別支援教育研究会 顧問 朝野 浩

 以前に一度「共に」に寄稿したご縁があるのか、再度 寄稿のご依頼がありました。今回はリレー掲載とか、1月号より 3回連続掲載となります。そのため、かって総合支援学校や大学に勤務しているときよりは、年齢も重なり、文章を書くことや読むことがかなり不精になり、自信がありませんでした。が、しかし一方、私は、現在 京都市立鳴滝総合支援学校での高等部職業学科を中心とした教育課程づくりの研究開発に協力し、足かけ4年間携わっています。そのため、先生方に研究授業の指導細案を要求しています。毎度、10ページ近い指導細案を事前に頂き、助言や疑問点を提示し、推敲します。至るところに朱を入れるのは、現役時代から変わらない「朝 野流対話指導」の叩き台となるものです。そこには、障害のない児童生徒のための指導案とは違った様式があり、 通常教育の中学校から赴任した先生方には、慣れなく、戸惑いや「させる」指導を展開することが多く、生徒の 生き生きとした自発的な活動を損ないかねない授業にな る傾向のものもあります。そこで、授業について私と授 業者との対話、アサーションの場から、授業者自身の迷いや不明なところなど、困りの解決に向けての「気づき」を引き出して、授業改善に向けていく方法をとっています。そのようなことをしながら、少しでも私自身の脳の 老化を遅らすことが出来ればと頑張っています。こうした理由で今回のご依頼もお受けする次第となりました。

さて、前置きが長くなりました。標題の「 遊びをせんとや 生まれけむ 」 の一節は、よくご存知かと思います。 今 NHKTV の大河ドラマ「光る君へ」の時代よりもう 少し後の平安時代末期に流行った「今様」という流行り 歌の一首の冒頭です。後白河法皇が編纂したといわれる『梁塵秘抄』です。私は此の冒頭の句よりも最後の一節「遊 ぶ子どもの声聞けば わが身さへこそゆるがるれ」の方 が好きです。多くの園長先生方や保育者の先生方が、若々 しく見えるのは、毎日幼児に触れることが多いからだと 思っています。私も、今日 70歳後半を迎えても楽しく個別指導訪問を 10年以上続けられるのも、此の今様の 一節のお蔭だと思っています。毎回毎回訪問する幼稚園で出会う子どもたちからエネルギーを貰うのとそこでの 新しい「気づき」や発見があります。「困り」を持った子どもに寄り添ったすばらしい保育に出会うこともあれば、子どもの「困り」に気がつかずに全体の進行ばかりを気にした指導があります。心の中で「そこはそうじゃ ないよ!」「もっとゆっくり観察して!」と声を出したくなることもあります。

そこで、長年のそうした経験から、先生方の指導上の「困り」を解決するための一助となるようなハンドブッ クのようなものがあればいいなという思いがありました。 今年度は、京都市私立幼稚園協会設立 50周年を節目として、障害の多様性に対応できるハンドブックを作るこ とになりました。特別支援教育研究会Cグループとして編成され、精鋭の5人の先生方と研修会担当理事の鴨東 幼稚園の西村二朗園長と私とが監修・編集担当しています。先生方が日常の保育でご苦労されている事象をピックアップして「〇〇〇かも」と切り口を設定して構成しています。子ども目線で状況を把握して、先生方の困り を想定し、失敗を恐れずに取り組んでいただける手だて を提案しています。研究会の 5人の先生方のご苦労とご 努力が、皆さまのお役に立てば幸いです。さて、「遊び」 についてのお話しが十分にできませんでした。この続きは、2 月号でしたいと思います。地震などによる災害や世界的紛争によって子どもの命が失われることない、希望と喜びに満ちた子どもの社会であるように、新しい年に当たりお祈りします。