輝く瞬間

【輝く瞬間】 2024年 3月

認定こども園紫野幼稚園 園長 渡邊 大修

 生命の息吹を感じて

 一年で最も寒い一月末のある日、年長児が園庭の落葉したブドウの木の前で話し合っています。「何か膨らんでる」「これは何?」ブドウの新芽を前に、口々に意見を出し合っていたのです〝これはチャンスだ〟と思って口をはさみました。「これは葉っぱの芽だよ。春には大きな葉になるからね。まだ寒いけど、この木はもうすぐ春が来るのを知っているんだよ。園庭にはほかにも同じようなものがあるから探してみようか。」そう言うと、こどもたちは一目散に駆け出します。そして「枝に芽があるよ」「チューリップの芽が土から出てるよ」などと、この時期特有の発見をしていました。

 冬に見られる葉の落ちた木は、一見すると「枯れている」かのような姿をしています。しかし、そこには確実に生命があり、よく見れば生命の息吹を感じられます。「こどもたちには、いつも感性を研ぎ澄ましていてほしい」。そう思わされた冬の一コマでした。

【輝く瞬間】 2024年 2月

京都聖母学院幼稚園 園長 寺井 朝子

 ある寒い日の朝、花壇の土が少し盛り上がっていて、よく見ると霜柱が見えていました。これは珍しいと思い、登園する子どもたちに、「これ見て!」と手招きすると、寒さで登園を渋っていた子も「何?」と足早に近づいてきました。

 「これ、なぁに? キラキラしてる。」年少の女児が言うと、私が答えるより早く年長の男児が「霜柱やで! テレビで見たことある!」と一言。触ってもいいかと尋ねられ、「どうぞ」と土塊を目の前に差し出すと、その子は手袋越しにそっと触りました。けれど、繊細な霜柱は手袋越しではなかなか感触が分かりません。自ら手袋を取り素手で触ると、すっと溶けて指に水滴がつきました。「うわぁ、溶けた。」自分にだけ聞こえるような小さな声でつぶやいたその子はとても嬉しそうに笑ってこちらに応えてくれました。

 実際に見て、触れて体験したことは、動画や図鑑などで得た知識とは違った快感があったようです。園での経験が、子どもたちの沢山の好奇心とその後の「大好き」に繋がっていきますように。

【輝く瞬間】 2024年 1月

洛西せいか幼稚園 園長 飯田玲子

 「ただいま!」元気いっぱいの笑顔で園に戻って来た子ども達。「行ってきます」の時とは明らかに違った表情です。

 この日は西京警察署からの依頼で年長組36名が阪急桂駅で行われた交通事故防止運動のお手伝いに出向きました。赤い三角帽子を被ってキッズサンタになり通行される方に「反射板をつけてください」「交通ルールを守ってください」と声を掛けながら反射板を配るというものです。

 いつもいっぱいに走りまわっているHくんは妙に真剣な表情で…。なかなか一歩が踏み出せないMちゃんは繋いでいた先生の手を振りほどいて改札口に向かう学生さんの元へ。それぞれが勇気を奮って参加でき大きな達成感を味わいました。

 大仕事をやり遂げ誇らし気な子ども達と陰で見守りホッと安堵された保護者の方の表情は本当に光輝いていました。子ども達の無限の力を感じた一日でした。

【輝く瞬間】 2023年 12月

自然幼稚園 副園長 北村佐智子

 「いらっしゃい! トッピングはどれにしますか?」どんぐりのお金を持った子どもたちが集まるとおみせやさんごっこが始まります。外食をした経験を再現しているのか、大人が営んでいる生活のやりとりを子どもたちはよく観察しているなと感心させられます。

 ある日ごっこ遊びの前に年長の二人組が集めたどんぐりを三等分しようとしていました。なぜ三つと不思議に思った先生がその理由をたずねてみると「わたしたちのと、それからちいさいおともだちのぶん。」と答えました。その日来ていた未就園児の子たちも一緒に遊んだら楽しいだろうとおもんばかっての行動に先生は温かい気持ちになりました。

 少子化で子どもが減るだけでなく地域の人とのつながりも希薄になる現代、子どもたちの育ちに「自分以外の人の事」を考える機会が減っているように思います。幼稚園ではヒト、モノ、コトとの出会いを大切に共に生きることを喜び合う社会づくりに貢献したいと思います。

【輝く瞬間】 2023年 11月

アヴェ・マリア幼稚園 園長 井上直美

 園庭のマリア様の足元に、黒い丸いツブがぞろぞろ。何だろう? まさかダンゴムシ?いいえ 彩づく前の南天の実でした。
 「先生、十月って何がある?」
 うーん、運動会、芋ほり、遠足かなぁ
 「ぼくの誕生日!」
 そうだった。ごめんね!
 今年の運動会は風が強い日でした。
 ポンポンも赤白の大玉も風ですうっと動いていく。カラーガードはできるだろうかと心配していました。いざ始まってみると、風になびく旗を力いっぱい支えながら、演技していく凛々しい子供達。一瞬たりとも見逃すものかと保護者の方々。成長を感じる一日でし
た。

 「あっ無いねぇ」まだ満三歳の園児がマリア様の足元を見てちょっとがっかり。
 南天の実が赤くなったら、もう一度マリア様に見ていただこうね。

【輝く瞬間】 2023年 10月

岩倉幼稚園 園長 田中 忍

 昔ながらの秋の運動会へ向けての取り組みが始まりました。普段何気なく使っている「前にならえ」の言葉がモヤモヤします。これは兵制から軍隊を思い浮かべるものとして想像してしまうからです。世界が不安定である状況の為、この無意識に使っている「言葉」は指導か? 将来の日本の為か? まで、おおごとにはしたくないと思いつつモヤモヤするのです。そもそも指導とは良い考えに導くもの。
「前にならえ」の良いことは何か? 私には子どもに答えられない。この「前にならえ」の言葉の間に私は手をあげたり、地面に下げたり、横に広げたりして子ども達の反応を見ます。真面目な子は「間違ってるよ」と「教えて」くれます。反対に笑いながら同じ動きをしたり、じっと考えている子もいます。でもその子たちこそ、周りに流されない小さな一筋の光があるように思います。先生たちの冷たい目が私に集中しますが、率先して私が間違ったことをすることで、子ども達はゲラゲラと笑いながら楽しんでいます。この笑顔のまま大人になれば、世界が少し良くなると感じるのですが・・・

【輝く瞬間】 2023年 9月

華頂幼稚園 副園長 野間 晴美

 トンボとバッタ採りで大賑わいの園庭。
 ビオトープではメダカが孵り、そのことに大興奮の3歳児たちが、きらきら光る白いメダカを手で掬おうとしていました。
 メダカがスッと逃げるので、次は素早くすくいとるように、その次は上から掴み取るようにと試行錯誤しています。「手を入れて待ってたら来るかもね。」と言う一人の声で、小さな掌が水の中に並びます。でも、メダカは来そうで来ません。すると今度は「葉っぱにしよ。」と別の声。手の代わりに葉っぱでカモフラージュしようという粋な提案に、今度こそと皆の期待が高まります。
 池に落ちないように踏ん張りながら葉っぱを沈め、声を潜めて息を凝らしてメダカを待つ子どもたちの姿は、メダカみたいにきらきら輝いて見えました。
 自然に感謝、子どもに感動の秋の日でした。

【輝く瞬間】 2023年 6月

聖三一幼稚園 園長 松﨑 美幸

 当園ではお誕生日会給食は特別メニューで、中でも子どもが楽しみにしているのは、その月のデザートです。5月の誕生会の日にお客様がお見えになり、年中組にご案内した際「良いね~そのケーキ。僕にも頂戴!!」と、お客様がK君に問いかけられると、「これは僕のだから駄目だよ。」と答えました。「じゃあ、お隣のお友達の分を貰おうかな!!」と、更にお客様が問いかけると「ケーキは皆の分だから、どれもあげられないよ!!」と、真剣な顔で問答が続きました。ふとその時、隣で給食を食べていたS君が「僕と半分こしよう~」と、笑顔でお客様に提案をしました。初めて会うお客様に「半分こしよう」と言ってくれる優しさに、お客様も私も大いに驚き嬉しくなりました。その後別室で会談をしていた私達に、担任の先生が「クラスの子ども達みんなが、お客様にケーキを半分あげると言って残しているのですがどうしましょう~」と言いに来てくれました。あまりに可愛くて、小さな輝きが大きく膨らむ、そんな驚きに幸せな瞬間でした。

【輝く瞬間】 2023年 5月

浄福寺幼稚園 副園長 菅原好章

 春になると本園の第二運動場のクローバー畑にシロツメクサが一面に咲きはじめます。
たいへん綺麗で、この季節のクローバー畑が子ども達も大好きです。シロツメクサを使って、首飾りを作ったり、指輪を作ったり、花冠を作ったり、様々なものを作ることが
できます。
 お友達が言いました。「花の冠を作ってお母さんにプレゼントするの。」母の日が近かったこともあり、普段お世話になっている大好きなお母さんへのプレゼントを頑張ってつくりました。なかなか難しいので、先生にも手伝ってもらいながら頑張りました。そして花冠が完成すると、お友達は満面の笑みで喜びました。きっとお母さんがプレゼントをもらって喜んでいる姿を思い浮かべたのでしょう。自然の中で子ども達の心がはぐくまれていることを嬉しく思います。これからも様々な活動を通して、子ども達の輝く姿にたくさん出会えることを楽しみにしています。

【輝く瞬間】 2023年 4月

紫野幼稚園 園長 渡邊大修

 別れの涙
 今日は三月三十一日。二〇二二年度最終日です。保育園部(二号認定)の保育があるため、今日もこどもたちが園に集っています。朝から年長児の大きな声が園内に響いていますが、この声を聞くのも最後かと思うと、何とも言えないさみしさがこみ上げてきます。そのような気持ちを抱いているのは私だけではなく、園児も同様のようです。
 昨夕のこと。最終登園日だった卒業児が帰る際、年中児が悲しさのあまり号泣し始めました。なかなか泣きやむことができず、卒業児との別れの悲しみがどれだけ大きいかが伝わってきました。また、ある卒業児は最後の登園日ということで、今朝は泣きながら登園してきました。友だちとの関係性が濃く、園での生活が楽しかった分、悲しみが深くなったのでしょう。
 ここ数日間で目の当たりにした数々の別れの涙は、園での生活が充実していた証だと感じます。改めて「こどもたちにとって特別な園であり続けたい」と感じさせられた年度末でした。