巻頭言

福島復興支援募金活動のお願い

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

 時が経つのは本当に早いもので、いつの間にかお彼岸が過ぎ、今年も3 か月を残すのみとなりました。そんな中、東日本大震災も発生から1 年半以上が経過しましたが、被災地の復興への道のりは依然として非常に厳しいままです。とりわけ福島県に至っては、原発の爪痕は想像を絶するほど深いものがあります。しかしそのような現実の中にあっても、現地の方々は復興への一筋の光を信じて、ひた向きに頑張っておられます。ところがその一方で、私たちも含めた社会の関心は徐々に薄れてきていることは否定できないのではないでしょうか。

 京私幼連盟は地震発生直後の平成23 年3 月末から今年の3 月末まで、4 回に渡り「義援金活動」を加盟園一斉に行い、大変多くの設置者・園長先生のご理解・ご協力をいただき、実に合計4300 万円以上の義援金を全日私幼連に送金いたしました。これは全国でも突出した有り難いものであり、先生方そして保護者の皆さまの温かいお気持ちに改めて心より感謝申し上げる次第です。

 既にご案内の通り、今年の京私幼連盟の園長・設置者管外研修は6 月末に福島県を訪れました。その最大の目的は言うまでもなく、東日本大震災で被災された幼稚園関係者の皆さまに直接お話を伺い、テレビや新聞などの報道では知り得ない、震災発生直後から現在までに、現場の中で起こっていたことに直接触れることで、私たちが京都からどのような支援をするべきなのか、何が出来るのかということに向き合うことでした。そしてもう一つは、京都に住む私たちが学ぶべきことは何なのかを考えることでした。

 関係者の先生方からは大変貴重なお話を伺うことができ、月報を臨時発行させていただきました。そして、改めて、大震災とりわけ原発の爪痕は深く深く関係者の皆さんの心の中に残り続けていて、復興までには遥に遠い道のりがあること、国や東京電力の賠償もいまだにほとんど手つかずのままであること、行政はこのような未曾有の事態でも前例にこだわり例外を認めないこと、などなど聞くこと全てが驚きの連続でした。しかし、そのような中にあっても福島の皆さんは、「子ども達の笑顔を見たら、しんどいことや、嫌なことなんか吹っ飛んでしまう」と笑顔で応えて下
さいました。

 今年度も半分が過ぎ、大震災から1 年半以上が経過しましたが、これを機会に京私幼連盟としましては、今年度は福島県を対象とした復興支援募金活動を全加盟園の皆さまにお願いしたいと存じます。前回と同様に京私幼連盟一斉に実施いたしますので、皆さまの温かいご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
(詳細は近日中にお知らせいたします。)

子ども・子育て関連3法案について

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

子ども・子育て関連3 法案については、衆議院で修正可決された後、7 月11 日(水)には、参議院本会議が開かれ、子ども・子育て関連3 法案を含む社会保障と税の一体改革にかかる法律案の趣旨説明及び質疑が行なわれ、7月18日(水)には特別委員会での審議が始まりました。以下、主な質疑内容です。

  1. 幼児教育・保育制度が、見方によっては一元化ではなく三元化になってしまうという
    批判に対してどう説明するのか。

    • →認定こども園、幼稚園、保育所の給付を施設型給付として一本化、その上、地域のニーズに対応できる多様な施設を用意。
      このことは一定の成果。今後は行政組織の在り方を検討していく。
  2. 今後も幼児教育には株式会社を参入させるべきではない。
    • →参議院での議論も踏まえ、検討すると回答するにとどまる。
  3. 制度に必要な1 兆円のうち7千億円は消費税の増税で賄うとされているが、残りの3 千億円の財源はどのように作るのか。
    • →財源の確保については、3 党合意及び法案の附則に基づいてその確保のため最大限努力していく。
  4. 子育て中の保護者などに対して、新制度をどのように説明していくのか。
    • →新制度の周知については、国会審議を通じて国民に制度改正の内容についてその意義や仕組を説明することが重要と認識している。
      関係者に広くきめ細かに周知に努めていきたい。
  5. 「子どもは家庭で育てる」ことが基本だと考える。
    「子どもは社会が育てる」とするなら、家庭教育の役割は何。子どもが親を尊敬する気持ちをどのように育てるのか。

    • →子育て政策の理念については、家庭教育はすべての教育の出発点であり重要な役割を担っているものと考えている。
      一方で、家庭や地域を取り巻く環境の変化に鑑み、社会全体で子育てを支えていくことも重要となっており、家庭教育の重視と社会全体での子育ての支援はともに大切である。

    総合こども園制度の撤廃、幼保育連携型への株式会社の新規参入不可、指定制の見送り、移行は強制でなく、幼保とも手上げ方式に修正など、私立幼稚園関係者にとって朗報と言える内容も含まれるものの、具体的にクリアしなければならない課題は山積です。夏休みをはさみ、9月にはどのような内容・方向で審議されているのか…。

子ども・子育て新システム

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

社会保障・税一体改革関連法案で民自公3党の修正協議がまとまり、新聞・テレビ等では「総合こども園法案を撤回し、認定こども園拡充を図る」と報道されましたが、全日私幼連のFAX速報では以下の通りです。

  1. 総合こども園法を制定するのではなく認定こども園法を改正し、幼保連携型認定こども園について、単一の施設として認可・指導監督を一本化した上で、学校と児童福祉施設としての法的な位置づけを持たせること
  2. 新たな幼保連携型認定こども園については、既存の幼稚園・保育所からの移行は義務づけないとともに、株式会社の参入を認めないこと
  3. 幼稚園、保育所、認定こども園を通じた共通の給付を創設し財政支援を行なうこと

以上ですが、細部の検討については今後引き続き行なわれる予定とのことです。

この合意によれば、幼児教育と保育を一体的に行なう幼保連携型認定こども園については、基準や財政支援も二本に分かれていた現在の仕組みから、一本の認可・基準・財政措置等が行なわれることになります。つまり、二重行政の問題や財政措置の問題など、従来、認定こども園制度について指摘されてきた課題が解決されることにより、これまで以上に設置の促進を図ろうとする狙いです。
また、政府提案の「総合こども園」は、株式会社などの参入まで認めることとなっていましたが、新たな幼保連携型認定こども園は、国、地方自治体、学校法人、社会福祉法人だけが、その判断により設置することになり、全日私幼連として強く反対してきた株式会社の参入は、主張のとおり取り下げられることになりました。

なお、幼稚園に対する財政支援は、これまで、私学助成と幼稚園就園奨励費補助金により行なわれてきたところですが、新たな仕組みでは、市町村が地域の幼児期の学校教育・保育のニーズを把握しこのための機会を確保するため、幼稚園、保育所、認定こども園等が市町村の計画に基づいて教育・保育を行なう場合には、これらに共通の給付を行なうこととなりました。そして、この給付には消費税財源も充てられることになりました。この給付を受けるか否かは幼稚園側の判断となりますが、この給付は地域の教育ニーズを満たすために行なわれるものであることから、この給付を受ける場合には、定員内で応募があれば受け入れる義務(応諾義務)や、保育料の水準などは市町村が決めること(公定価格。ただし上乗せ徴収も可能)などの制約を受けることになります。この給付を受けない場合には、従来どおり、私学助成や幼稚園就園奨励費補助金による財政支援が行なわれることになります。

全日私幼連は「指定制」は導入せず、認可等を受けた幼稚園であれば新たな給付を受けることができるようにすること、新たな給付は幼稚園の判断により受けないことができることとし、この場合には引き続き私学助成と幼稚園就園奨励費補助金による財政支援の対象とするとともに、その充実に努めること、その他詳細については、今後引き続き検討・協議を行なうこととしています。

子ども・子育て新システムの課題

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

まさに今、子ども・子育て新システム関連3法案が本通常国会において審議されています。消費増税案や政局との微妙な水面下での駆け引きもあり、行く末は全く不透明ですが、一時たりとも目が離せない状況です。

全日私幼連では4月12日付けで7項目からなる、重要課題を提言(全日私幼連HP参照)していますが、ここから読み取れることがらは、この法案は、子どもの健全な育ちという視点が全くない上に、我が国の現在までの教育制度の歴史や精神を極めて軽視した、非常に唐突な話に他ならないということです。

例えば総合こども園には株式会社が参入することが可能となります。確かに既に社会福祉の分野には株式会社が参入できますから、今日的な社会情勢の流れとは言えましょう。しかしこの先には重要な問題が存在します。つまり、満3歳以上の総合こども園は全てが「学校」として認められるようになるのです。従って、株式会社が設立した総合こども園も、れっきとした学校というお墨付きをもらえることになります。

これは学校制度の誕生以来、永年に渡り我が国の学校教育を支え続けてきた根幹法である「教育基本法」の精神を全く無視した、信じ難い法解釈です。なぜならば、我が国における教育施策は「教育基本法」を頂点として、その中に「学校教育法」が包括されています。そして、学校は言うまでもなく「学校教育法」の第一条に規定されています。またその第二条には学校は、国、地方公共団体及び私立学校法第三条 に規定する学校法人のみが、これを設置することができる。と明確に規定されているのです。このことからも明らかなように「教育基本法」→「学校教育法」という正しい流れの法解釈では、株式会社が学校を設立することは不可能なのです。

そこで政府案は非常に不自然な形で法的根拠を創り上げています。つまり、教育基本法の第六条に学校教育に関する規定があり、「法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。」という条文を利用し、株式会社の総合こども園も、総合こども園法で定めた「学校」であるから、教育基本法の第六条が適応されるという訳です。

まさしく法の網の目をかいくぐった解釈という表現がぴったりです。いかなる分野でもこのような手口は決して感心したものではありませんが、ましてや、一国の将来を担う子どもたちを育む幼児教育の世界に、こともあろうが政府自身がこのような手法を用いること自体が、幼児教育重視の世界の流れからは、極めて貧しく、恥じるべき発想と受け取られても仕方ないでしょう。

今私たちが出来ることは、とにかく議論の行く末を注視することにつきますが、だからこそ、様々な問題点を共有し、私たちの思いを一つに束ねていくことと感じます。皆様の更なるご理解・ご協力を何卒よろしくお願いいたします。

  

明日の日本を担う幼児教育 ~こどもがまんなかの社会の実現を目指して~

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

 新年度が始まり早くも一月が経とうとしていますが、今年度は我が国の将来にとって極めて重要なターニングポイントとなるかもしれません。しかもそれが果たして良い方向への第一歩に向かうのか、それとも逆に動くのか。現時点では何とも言えません。

 ご存じの通り、今まさに「総合こども園法案」「子ども・子育て支援法案」などの関連法案が消費増税法案と共に国会において議論されようとしています。しかし「こども」「子ども」というのは名ばかりで、これらの中身には子どものための視点など全く存在しません。そして家庭における子育てをていねいに支援していこうという思いも全くありません。 

 全ての子どもが、子どもとしてふさわしい環境の中で育つ権利を有しているにもかかわらず、それを最も責任をもって保証しなければならない立場であるはずの国家が、大人の都合によりその質を平気で下げようとしている現実を私たちはどうして容認することができるでしょうか。我が子と一生懸命向き合いながら育てるからこそ、親は喜びも悩みも体験しながら、人として成長できるのです。子育てとは子どもだけでなく、そこに関わる大人も人として育つことができる、稀有かつ極めて崇高で意味のある重要な営みなのです。つまり親と子を引き離す施策は子どもだけでなく、大人が豊かな心をもった人として育つ機会さえも奪い取ってしまうのです。

 先進諸国ではもはや幼児期の国家予算は経費ではなく、国家としての「投資」として、極めて重要視されています。だからこそ私たちのするべきことは更に誇りと責任を持ちながら、目の前の親子に「広く」「深く」「ていねい」に関わることであり、その重要性を社会に明確にアピールすることなのです。

 そして同時に、私立としての建学の精神は大切に継承する一方で、社会から求められる公益性・公共性に対してもしっかりと責任を果たすことを時代は求めています。公費が投入されている以上、私立幼稚園としても募集活動などのルールを守りつつ、学校評価や研修会への出席などの責務を果たすことが必要不可欠です。

 このように極めて重要かつ厳しい局面であるからこそ、京私幼連盟は今まで以上に加盟園、保護者、行政との絆を深め、大切にしながら、さまざまな課題に向き合うことが重要と考えます。そしてどのような場面においても私たちは目先の良し悪し、自己の利益だけで物事を判断するのではなく、常に「子どもの最善の利益」を何よりも一番に考えながら、自己の責務を果たしつつ、組織として一丸となり互いに支え合わねばなりません。

 目前に迫った公益社団法人化に関わる認可申請など、内部にも重要課題が山積致します。しかしだからこそ伝統ある京私幼連盟の培ってきた誇り、そして私立幼稚園の持つ「夢と明るさ」と「こどもごころ」をもって今年度も向き合ってまいりたいと存じますので、会員各位の多大なるご支援とご協力を心よりよろしくお願い申し上げます。

  

『一年の節目にあたって』

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

 早いもので平成23年度も終了の時を迎えます。改めて会員の皆様のご理解・ご協力に対しまして心より厚く御礼を申し上げます。

 さて、大震災も発生してから1年が経過しましたが、被災地の復興はまだまだ非常に厳しいのが現状です。しかしそんな中にあっても、子ども達のことを思い、前を向いて保育をされている幼稚園がたくさんあります。
 1年経ったから支援・応援はもう終わりではなく、これからが本当に大切であることをこれを機に皆さんと共有したいと思います。

 そこで今回は、(財)全日私幼研究機構の幼児教育実践学会においても大震災に関する意見発表を積極的にされ、今回の「ぬくもり」の取材にもご協力をいただいた福島県いわき市「ほうとく幼稚園」の生駒恭子副園長先生からのメッセージをご紹介させていただきます。

『いつだって・・・お母さん、お父さんの苦悩は勇気に変わる・・・。』

ほうとく幼稚園
副園長 生 駒 恭 子

◆恐ろしいことが起こりました 平成23年3月11日午後2時46分地震発生。まもなく、津波襲来。同日午後7時03分緊急事態宣言。翌日3月12日午後3時36分水素爆発。福島の人々の暮らしが根底から変わりました。

  この日からまもなく1年を迎えようとしています。日本中の皆様の温かい善意を頂き福島の子どもと大人が一歩一歩あらたな暮らしを創る努力を始めました。この紙面をお借りし心より御礼申し上げます。

◆お外にでられなくて嫌ですね 幼稚園に届けられた義捐金に添えられたかわいい何通もの手紙を子どもたちに読んでいくと「先生、遠くに友だちがいるってなんだかドキドキするね!」「本当だね、ドキドキするね」「どうしてそう思ったの?」「だってね、お外で遊べなくてやだな~って思っていることを遠いのに知っててくれたから」そんなやり取りが5歳児のクラスで交わされました。

子ども達との会話を聞きながら手紙を寄せてくださったそのお子さんとお母様の姿が浮かんでくるようでした。福島のことをどのようにお母さんは語ってくださったのでしょうか。その、文字に込められた「ことば」に触れた子どもや保育者、保護者が「遠くにいる友達」を感じ、絶えず、同じ子どもをもつ多くの保護者の皆様が福島で起きていること、そしてそこで苦悩し子どもと暮していることを自分のこととして考え思案してくださることが、どれほど福島の子どもと大人を元気付けてくれたか知れません。

◆怯え続けることがどんなに切ないか・・・放射能の問題はこれから30年にも渡って私達と共にある問題となりました。事故発生当初、避難を余儀なくされた家族、自主的避難を選択した家族、福島に暮らすことを選択した家族、様々な家族の苦悩を私たち保育者はそばで共にしてきました。放射能汚染と言う初めて経験する事態にどの選択をした家族も苦悩の選択をしてきました。

福島で暮らすことを選択しつつも本当に福島で子育てすることが良いのか、福島で保育することへの罪悪感すら心をかすめました。しかし、子どもと共に暮らす中で私たち大人は子どもの生き生きしさに心を奪われずにいられませんでした。怯え続ける辛さより子どもと共に生きることの努力をとめないことを選択できるようになりました。

◆子どもを愛さずにいられない 日々の子どもの暮らしに目を向けるとそこにはユニークでそして仲間と豊かな発見に満ちて遊ぶ姿がちりばめられていました。支援物資でのお店屋さんごっこ、沢山のミネラルウォーターでお水やさん、野菜の切れ端で水耕栽培・・・そこからの様々なアクシデントと発展!そこには環境を受け止めあらたに変えていく子どもの生きる力が感じ取れました。

子どものしぐさ、言葉・行動に私たち大人は目を奪われ心を揺さぶられずにはいられませんでした。あたり前の日々の暮らしの些細なこと、家族として、親として子どもと暮らす喜びを大切にしたいとみんなが思っています。

◆放射NOバスターズ! 戸外での活動を制限せざるを得ない中、10月の運動会シーズンを迎え大人たちの「放射能ブルー」をよそに子どもたちは「どうやったら外で運動会が出来るのか」を私たちに問いかけてきました。

子どもの問いは、「今、私たちのために何をしてくれるの?!」と突き詰められた思いがしました。全園児保護者・OBが集まり運動会一日のための除染作業「放射NOバスターズ」を決行。「子どもと今に生きる」ことを大人たちが誇りと思えるよう変化しています。

<御礼>
  (社)京都府私立幼稚園連盟の関係者の皆様には東日本大震災が発生して以来、本当にたくさんのご支援、ご協力を頂戴し、誠にありがとうございました。特に義援金活動に関しましては度重なるお願いに対して、とても温かいお気持ちを頂き、心より厚く御礼申し上げます。

  京私幼連盟としての平成23年度の一斉義援金活動は一旦終了させていただきますが、次年度以降も皆様方の温かいご理解・ご協力・ご支援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

『いのちを大切にする日』

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

 東日本大震災発生以来、一年が経とうとしています。この時間が果たして早かったのか、遅かったのかそれは一人ひとりの立場や受け取り方で大きく変わってくることでしょう。しかし、とにもかくにも一年間という時間が経過しようとしていることだけは厳然たる事実です。
そのような時間の経過とともに、被災された方々や被災地への私たちの思いは少しずつ風化してきて、他人事になってきていることは残念ながら否定できません。人間は時間の経過の中で、感情を忘れ去ることで、自分のバランスを保っている生き物である以上、とても悲しいことではありますが、こればかりは仕方のないことでもあります。
しかしだからと言って、自然の成り行きに任せっきりでいいはずがありません。京私幼連盟としてはこのような時こそ、組織としての結束力を活用することが重要であると考え、単独の幼稚園では難しい継続的な一斉義援金活動を実施してまいりました。その結果、これまでの計三度に及ぶ一斉の呼びかけに対して、大変多くの皆様方に多額の義援金をお寄せいただきました。改めて京私幼連盟の設置者・園長先生、教職員の皆様、そして保護者の皆さまの大変温かいお心に心より御礼申し上げますと共に、今年度最後の一斉義援金活動へのご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
さてこの度、全日本私立幼稚園連合会では、来る「3月11日」を「いのちを大切にする日」と定めました。これは全国の幼稚園そして家庭で「いのち」についてしっかり考える時間をもってもらい、震災で犠牲になられた皆さんのことを今一度悼み、そして被災された方を応援し、被災地の復興を祈願するという心の灯をみんなでつながって作っていこうというものです。
3月11日の当日は日曜日のため保育はありませんが、是非ともその前後に幼稚園で何らかのお取り組みをしていただきますと共に、保護者の皆様にもお伝えしていただきますように何卒お願い申し上げます。
親子関係所の機関紙「ぬくもり」の取材のために先日、福島市を再訪し保護者の方からお話を伺いました。最も印象的だったのは「普通の生活、当たり前のことができることがどんなことよりもすごいことで、一番幸せなことです。」という言葉でした。あの日以来福島県では当たり前のことが日常から消えてなくなってしまったそうです。それは一体いつになったら取り戻せるのでしょうか。そのような中にあっても、お母さんたちは今まで以上に家族で過ごす時間が増え、絆が深まったと笑顔で語ってくださいました。
「いのちを大切にする日」の一つ一つの取り組みの灯はどんなに小さくても、その灯がつながり、集まればそれは無尽の明るさとなることを信じて、みなさまのご理解・ご協力を重ねてお願い申し上げます。

第26回 全日本私立幼稚園PTA連合会全国大会に参加しました。

(社)京都府私立幼稚園連盟
副理事長 長 澤 宗 一

 平成23年12月1日,京私幼PTA連合会の筑摩寿会長をはじめ役員の皆様10名と,連盟三役・監事・理事・役員9名の計19名で,東京アルカディア市ヶ谷にて行われた第26回全日本私立幼稚園PTA連合会全国大会に参加しました。今年の大会テーマは,「次代を担う子どものために~家族の絆に心ゆたかな子~ 」です。第1部では,河村建夫 全日本私立幼稚園PTA連合会会長のあいさつのあと,教育の原点である家庭の重要性と,幼稚園教育の重要性,さらに安全な社会を目指すことをアピールした宣言が,保護者代表によって読み上げられました。また第2部の記念講演では,イクメン俳優 照英氏による,「笑顔があふれる家庭の中で,子どもの伸びる力が育っていく」と題しての講演が、香川敬 全日私会長との対談形式で行われました。締めくくりの「家族・子どもがいるからこそ自分がある。愛情を持って本気で生きていくこと。自分に自信を持って楽しい人生を送ること。素敵な日本を。」という熱いメッセージが印象的な大会となりました。
大会の前に訪れた衆参国会議員会館では,伊吹文明先生と,西田昌司先生に直接お会いすることができ,子育て新システムに対して,幼稚園や保育園が強制的に一つの類型にまとめられるべきではなく、多様なニーズに対応できる多様な施設が存在できる仕組みをつくるべきこと,「幼稚園」の名称を存続させてほしいこと,私学助成(機関補助)を存続させてほしいこと,現場が混乱しない仕組みにすることなどの意見を柱とした要望書をお渡ししました。
 大会終了後には,京都府東京事務所を訪問しました。山内一所長様はじめ事務所の皆様の暖かいお出迎えを受け,全国知事会長である山田啓二京都府知事と手を携えていくことの確認と,私立幼稚園へのエールを頂きました。

幼保一体化について

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤 本 明 弘

 11月15日(火)に全日私幼連の近畿地区役員会が奈良県で開催され、文科省の蛯名喜之幼児教育課長が幼保一体化について講演されました。その内容は7月29日に出された「子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ」の解説が中心で、特に新しい情報はありませんでしたが、改めて以下のようなさまざまな課題や問題点を感じざるを得ませんでした。

■給付システムの一体化について

 給付の一体化及び強化を図り、幼稚園、保育所に違うお金が拠出されている現状を改め、できるだけ1本化をしていく。指定施設に給付されるシステム(お金の流れるしくみ)をこども園給付と呼んでいる。
 そのために市町村がどれくらいの学校教育・保育のニーズがあるか把握→そのための必要な施設(基盤)の算出→運営のための経費を算出し、指定施設に給付するという流れが必要となってくる。つまり市町村の役割が非常に大きくなってくるが、私立幼稚園は特に区域を越えた入園も多く、都道府県でないと果たせない枠割もある。そのため市町村に縛られず、市町村との関係を調整する権限が必要である。また実際の学校教育・保育のニーズを何をもって測るのかも現実問題難しい問題であり、給付の一体化はまだ理解できても、何をもって強化を意味するのかも全く見えてこない。

■新たな制度における契約方式について

 こども園給付は保護者(利用者)に対する個人給付を基礎とし、確実に学校教育・保育に要する費用に充てるため、「法定代理受領」の仕組となっている。つまり市町村が利用者の保育の必要性を認定し、それに基づく個人給付を「こども園給付」として「こども園」(仮称)に給付する流れとなる。そして全ての保護者が自ら施設を選択し、保護者が施設と契約する公的契約とし、正当な理由がある場合を除き、施設に応諾義務が課される。ここで言う正当な理由とは、入園希望者が定員を上回る場合が該当するとされている。
 現状の契約はあくまでも保護者の「直接契約」であると同時に「私的契約」であるが、新たな制度では「公的契約」となり、保護者が希望すれば施設側には入園を拒むことはできない、「応諾義務」が課せられる。このような契約方式は明らかに私学の独自性を相容れないものであり、十分な議論を経ないまま実施されると現場には大きな混乱が生じることは明白である。また、新たな制度における価格(保育料)設定には公定価格の考え方の導入が検討されている。上乗せ徴収は可能とするものの、基本的には公定価格の導入である。

■社会保障・税の一体改革の具体策について

 消費税増税分の確保が大前提であるが、全く見通しが立たないばかりか、増税の旗振りとして利用だけされて、取り残されることさえ憂慮される現状である。
※基本制度ワーキングチームが次回11月24日(木)に開催されますが、ここでの議論の内容が非常に注目されます。

学校評価の実施と実態

(社)京都府私立幼稚園連盟
研究担当副理事長 川 名 マ ミ

 様々な時代の流れの中で、私立幼稚園は建学の精神・自由性を大切にしなければならないという側面と、日本の幼児教育の中心的役割を担っているという公共性との接点を社会から求められています。その流れの一つとして、平成19年6月より、幼稚園における自己評価の実施・公表、評価結果の設置者への報告が義務化、学校関係者評価の実施が努力義務化となりました。
 しかし残念ながら現実には、私立幼稚園の学校評価はあまり進んでいません。文部科学省の調査では平成20年度間の私立幼稚園における自己評価実施率は全体の60.9%にとどまっています。この調査で報告された他校種や公立幼稚園と私立幼稚園の実施率を比較すると、共に私立幼稚園の実績が相当低い実態であることが明らかになりました。
 確かに年々仕事が多岐に渡り増え続け、しかも質の向上も求められる中、時間的なゆとりは決してありません。しかし、この実態は社会的には私立幼稚園の怠慢と認識されても反論できないところです。このままの状況が続けば結果的にさまざまな指導が私立幼稚園に発生する可能性も否定できません。その意味では私たちも今一度、学校評価に対する見識を深め、「義務」に対する意識を高める必要があります。
 しかし、自己評価は実施していないと報告している園長でもよく話を聞いてみると、紙面上に整理されていないだけで実質的には自己評価を行っているということがあるようです。
 例えば、「今年は園庭の同じ場所でけがをする子が多かったので調べてみたら、木の根が地上に張り出していてつまずきやすくなっていた」とか、「子どもたちの遊びが長続きせず発展していかないので、行事を見直して時間をゆっくり使えるよう保育を工夫した」等、環境の見直しや保育の振り返りはどこの園でも必ず行っており、自己評価として意識せずに行っているのです。これらのことが、実は自己評価であることに気づいていない実態がうかがえます。
 要するに、今、各園が実践していることをどのように社会に発信するか、ということ、その過程の中で点検、改善をし、変化、進化さすべきことは園の責任として行っていく、それをどのように紙面化・書式化するかという事です。
 重ねてになりますが、「評価される」と捉えると身構えてしまいますが、自園のボトムアップの機会と捉えれば、主体的に積極的にとりくむべき事柄だという事がおのずと見えてくると思います。受け身の評価から主体的な評価に意識転換していくことが重要です。
 前述の通り、万一、今後も実施が進まない状況が続けば、現在は将来課題として議論されている第三者評価について、今、幼稚園側の考えである「公開保育を第三者評価にしたい」という構想も受け入れられない事になるかもしれない可能性があります。 そのことも踏まえ、今一度、学校評価について主体的な取り組みをしなければならないことを再認識していただき、また、同時に連盟として研修会などを通して各園をサポートできるよう努力していきたいと思っています。

※ 文中一部全日幼児教育研究機構・第三者評価調査報告書より抜粋